103系は1963年に登場した直流通勤形電車である。前身の101系が高速性能を重視した設計に対し、本形式は加速性能に重点を置いて設計された。1963年に試作車が登場した後に1964年から量産化が始まり、1984年1月までに3447両が製造された。

新造車3447両の他にも72系から20両が、101系から36両が編入されており、改造車56両も含めると合計は3503両だが、全車が同時に在籍した事はない。これは1971に事故廃車が2両発生している事と全車両の製造が終わった直後に65両が105系に改造されたためである。

JR発足後は3436両が東日本旅客鉄道・東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道・九州旅客鉄道にそれぞれ引き継がれた。内訳は東日本旅客鉄道が2418両・東海旅客鉄道が70両・西日本旅客鉄道が894両・九州旅客鉄道が54両であるが、東日本旅客鉄道では2009年に、東海旅客鉄道では2001年に全廃になっており、2023年4月1日現在は西日本旅客鉄道に40両が、九州旅客鉄道に15両の合計55両が在籍している。

車体

車体は101系をベースに普通鋼が採用された。そのため全面以外は101系との変化は少ないが、機器類は大きく変更された。また、20年以上の長期にわたって製造されたので初期と後期では相違点が多い。

性能

MT比1:1とし、主電動機は駅間が短い通勤路線向けに設計された低回転数域トルク特性を重視して定格速度を下げ、これに合わせて電機子の磁気容量を大きく取った新設計のMT55形を採用した。日立製作所が現設計を担当した。

営業最高速度は100km/hだが、MT比1:1の場合90km/hを超えると加速余力が少なくなるため実質的には95km/h前後である。

主要諸元

1時間定格出力=110KW/375V/330A/1350rpm(85%界磁)
85%界磁定格速度=36.5km
加速度=4M4T時2.0(6M4T時2.3)km/h/s
駆動方式=中空軸平行カルダン方式
営業最高速度=100km/h
設計最高速度=100km/h

台車

試作車用

DT26C形電動台車

クモヤ791形用のDT26形の枕バネをコイルばねに変更したDT21形の派生形式。

TR62X形付随台車

TR62形のブレーキシューを片押し式に変更。

量産車用

DT33形電動台車

DT26C形の量産化形式。主電動機のMT55形がMT46形と比較して磁気容量確保や低定格回転数化のため大直径化したのに合わせて車輪径は通常の860mmより大きい910mmでホイールベースは通常の2100mmより長い2300mmとなった。

歯車比は15:91=1:6.07であるが、860mm車輪径換算では1:5.73に相当する。

TR201形付随台車

TR62X形の量産化形式。

TR212形付随台車

TR201形のブレーキを再度ディスクブレーキ化した形式。

前述したように加速性能に重点を置いた設計だったが、増備が進むにつれて次第に本来の用途とは異なる線区にも進出していった。それに伴い加速性能では分流抵抗による弱め界磁率の誤差の修正する改造と高速域からの電気ブレーキ性能では過電圧対策などを施して高速性能を改善した車両もあった。

また、最初の投入路線が山手線であったことから駅間距離が短い山の手線専用と言われた事もあったが、当時の関係者によって否定されている。

101系からの変更点

床のコルク材を廃止し、床の厚みが薄くなって台枠底面の高さがやや上昇。

パンタグラフは高圧引通線を短縮化するため電動車(クモハ103形・モハ103形)に搭載。

乗務員への軌道の流れによる圧迫感を防ぐため運転台窓を天地方向にやや縮小。

運転台を以下のものに改良。

視認性を重視したメーター類の配置。

操作性や疲労軽減性を考慮してマスコン・ブレーキハンドル・運転士座席が手前に傾けられた。

多用するスイッチ類を制御卓に集約。

運転台下部正面中央にも外気導入口を追加。

主電動機と電動発電機冷却風取入口は電動車の車体外側幕板部に設置し、戸袋を利用して車体下部に導く方式を採用。

全面方向幕の拡大。

電動空気圧縮機を2倍の能力があるc2000形とし、搭載車両を電動車(クモハ102形・モハ102形)に集約。

電動発電機は主抵抗器冷却送風機兼用から独立させ、地下鉄用を除く初期の非冷房車は容量が20KWのものを電動車に搭載。

ドアエンジンを変更。

1基のドアエンジン(TK4形)と連動ベルトで構成される西武建設(西武所沢車両工場)が西武451系電車用に開発したST式戸閉装置を採用。

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