主人公の蒲谷雷慈(かまやらいじ)はどこにでもいる普通の中学生だ。しかし普通だったのはほんの少し前までの話だった。何故なら・・・

道を歩いていたら誰かが捨てたガムを踏んでしまったり・・・
上級生の不良生徒に絡まれてボコボコにされたり・・・
エレベーターに閉じ込められたり・・・
そのせいか勉強の成績も下がったり・・・

とにかく受難な日々が続いていたのだった。

そしてその不運ぷりは学校内でも有名になってしまい
「雷慈の奴すげえかわいそうだよな」
「何かあいつといると俺達まで不幸が伝染りそうだぜ。」
校内ではどんどん孤立していき、彼に見向きする者はほとんどいなくなった。

ある日もいつものように一日を終え、自室に戻った彼は鏡を前にしてこう呟いた。
「俺って何でこうも運に見放されたんだろ。」

意気消沈しながら鏡に向き合ってた時だった。

ピカッ!

突然鏡が光りだした。
「わぁっ!!」
雷慈は思わず目を眩ませた。

光が消えると目の前には長いピンクの髪をポニーテールにして、リボン等の装飾が施された膝までの長さのピンクのワンピースを基調としたコスチュームを着た少女がいたのだった。突然の出来事に雷慈はただ驚きながらも容態淡麗でかわいいその姿に見入ってもいた。
「君は一体誰?どうして俺の所に?」
少女は雷慈にこう言った。
「私はエレナ・サイクロン・マカダミア・ロドリゲス・ワイルド・フォーエバー。パラレルワールドの地球にある雷慈の家から来たの。聞いた所によると雷慈は今不幸続きで今後も不幸が続くとやがて雷慈は死んでしまうかもしれないわ。だから雷慈の未来を良くするためにも君の家に来たの。」

事情を聞いた雷慈は自分の運命に驚くが、
「でも何で俺の所に?パラレルワールドなら他にもたくさんあるはずなのに?」
雷慈の質問にエレナはこう返した。
「実は私と同年代の家族は雷慈しかいないの。私のいる世界ではパラレルワールドの全世界を見る事が出来てその中で唯一の同年代の君が危ない事を知ってここに来たの。」
エレナの言葉に雷慈は一瞬戸惑いを見せつつもこう言った。
「俺を助けてくれるのは嬉しいよ。でも見ず知らずの人が勝手に部屋に入るとまずいんじゃないかな?」
「え〜、私は雷慈のこれからを思って来たのに!じゃあ明日死んでもいいなら私帰るよっ!!」
雷慈の言葉にムッと来たのかエレナは鏡の中に戻ろうとするが、エレナの言葉に焦った雷慈は彼女を引き止める。

「ゴメン、悪かったって。俺の事を思ってくれるのは凄く嬉しいから。どうすれば許してくれる?」
雷慈の言葉にエレナはこう答えた。
「私を抱きしめて。」
エレナの要求に慌てる雷慈だが、
「なーんだ。やっぱりやってくれないのね。じゃあもうどうなっても知らないから!」
雷慈は再び鏡の中に戻ろうとするエレナを慌てて抱きしめようとしたが何故か静止される。
「えっ?抱きしめてって言ったのに違うの?」
雷慈はあわてふためくが
「今の姿は変身した姿なの。私には変身出来る能力があってそれが知られてしまうのはいけない事なの。」
エレナはそう言うと変身前の姿に戻った。本来の姿を見せたエレナはピンクのセミロングの髪に青色の上下服(ジャケットを羽織り、中に白シャツとプリーツスカート)を組み合わせた姿だった。

本来の姿に戻ったエレナを雷慈は再び抱きしめた。雷慈は生まれて初めての経験に
(こんな事初めてだよ。こんな経験二度とないかも。)
雷慈は内心そう思った。一方エレナも
(男子の温もりってこんなにも暖かいのね。)
部屋は甘い雰囲気で溢れていた。

しかしそれも束の間で今度は階段を上がって来る音が聞こえて来る。
「まずい、親が入って来る!少しだけ隠れて。」
エレナは隙間に隠れる。そして部屋には親が揃って入って来ると父はこう聞いた。
「今女の子の声が聞こえたけど誰か来てるのか?」
雷慈は冷や汗が止まらない程焦った。
(まずい、どうしよう。エレナの事話しても絶対信じてもらえないよ。)
何もないと感じたのか父母は部屋を出ようとしたその時だった。

ズッデーン!!

後ろで転ぶ音が聞こえたので振り返るとそこには転倒したエレナがいた。

雷慈とエレナは事の経緯を話した。
「うーんにわかに信じがたい話だがなぁ。」
「でも雷慈の将来がかかってるみたいだし、今日から雷慈の事よろしくね。」
父母は困惑しながらもエレナを迎え入れた。

その日の夜、雷慈が風呂に入ろうとすると
「雷慈、私も一緒に入っていい?」
何とエレナは雷慈と一緒に入りたいと言うのだ。エレナの言葉にはさすがに親も止めるだろうと思った。すると
「一緒に入っていいぞ。ウチの風呂は広いから。」

親の承諾もあって二人は一緒に風呂に入る事となった。

「なぁ、エレナの住む世界はどんな風になっているの?」
雷慈はエレナの世界を聞いてみた。
「私の住む世界は雷慈の世界とあまり変わらないよ。でも一つだけ違う所があるの。それはね、私のいる世界では先天的に他の姿に変身出来る力があってそれを使うと超人的なパワーが出せたり特殊能力を使う事が出来るのよ。でもパラレルワールドの世界ではそれを知られてはいけないの。」
「それは何で?ばれるとどうなっちゃうの?」
「バレてしまうとパラレルワールドの力を悪用される危険性があるの。もし悪用されたら大変な事になるわ。あっ、そうだ!今日は私が雷慈の全身洗ってあげるよ。」

突然の爆弾発言に驚く雷慈。
「えっ、いいの?何か悪いなぁ。」
「いいのいいのっ。雷慈のためだから。」
「じゃあ洗い終わったら今度は俺がエレナの体を洗ってあげるよ。」
「いいけど変な事考えないでよ。」

その後、寝室で眠りにつく時も話は続いて
「エレナって家族何人いるの?」
「父と母と私と妹の4人よ。」
「パラレルワールドの世界に行くきっかけとなった事は?」
「私の家では全てのパラレルワールドの世界を見る事が出来て、そしたら雷慈が危ない事を知った両親の勧めでここに来たの。ってさっきも話したよね?」
「そうだっけ?」

こうして夜はふけていった。

翌日、二人が街を歩いていると
「おっ雷慈じゃねーか。」
二人の少年が声をかけて来た。
「和也と真司!」
二人は雷慈のクラスメイトだ。すると二人はエレナに目をやる。
「君は?」
「私はエレナ・サイクロン・マカダミア・ロドリゲス・ワイルド・フォーエバーって言うの。長いからエレナでいいよ。」
エレナを見た二人は思わず顔が赤くなり、雷慈に質問した。
「雷慈!おめーこんなにかわいい子と知り合いなのかよ!!どこで出会ったの?」
(マ、マズイ。パラレルワールドの事とか知られたら大変な事になる。)
そう考えた雷慈はこう返した。
「ちょっと色々事情があって俺の所で暮らしているんだ。」
(ふぅ、何とか誤魔化せられたな。)

その後は4人で街を探索したりして思い思いに休日を楽しんだのだった。そして家路につこうとした時事件は起きた。

後ろからバイクが近づいてきて
「わあっ!」
何と後ろから近づいて来たバイクの男が和也と真司を気絶させ、二人の荷物を強奪したのだ。
すぐさまエレナは変身する。すると
「雷慈にも私の力をあげるから。」
そう言うとエレナは雷慈の手を握り雷慈にも同じ力を与えた。
その後雷慈とエレナは二人を救護する。
「ん・・・雷慈と君は?」
二人は意識を取り戻し、エレナに名前を聞く。
「説明は後、今はひったくりを追うのが先よ。」
「でもどうやって?」
雷慈は首を傾げる。
「私は和也を背負うから雷慈は真司を背負って。」
エレナの言葉に雷慈は驚きを隠せない。
「そんな無茶だよ。人を背負ってバイクを追うなんて。」
「今なら速く走れるわ。」
そう言うとエレナは和也を背負った状態で走り始めた。その速さは目にも止まらない程だった。
雷慈もエレナを追って走り始めた。
(凄い、なんて速さなんだ。これがパラレルワールドの力か。)
そう思いながらエレナに追いついた。

エレナに追いついた雷慈は共に追跡を続け、遂にひったくり犯を発見した。ひったくり犯を発見した雷慈とエレナは背負っていた和也&真司を降ろしてひったくり犯を捕まえようとするが、ひったくり犯はライフルを取り出して発射した。
「死ねェェェェェクソ女(アマ)共ォォォォォ!!!」

二人が弾丸を避けるとエレナは高く飛び上がり、右手のグーパンチをひったくり犯に叩き込んだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ドッゴォォォォォン!!!

エレナのグーパンチが命中するとそこには大きなクレーターが出来た。その光景に雷慈はもちろん和也と真司も驚きを隠せない。
(これがパラレルワールドの力?)
(見かけによらず強い。)
これにはさすがのひったくり犯も観念しただろうと思った時だった。

「ククククク、さっきはよくも俺をコケにしてくれたな。」
何とひったくり犯はエレナの攻撃をものともせずに起き上がって来たのだ。
「今度こそ死ねェェェェェ!!!」
そう言うと再びライフルを発射しようとする・・・が、既に玉切れだったため、発射する事が出来なかった。
こうしてひったくり犯はなすすべもなくその場に倒れ、雷慈とエレナによって捕えられたのだった。

翌日、新聞には前日の事が一面トップで掲載され、こう書かれていた。
[中学生と謎の美少女の連携プレイで見事お手柄]

そして学校ではひったくり犯を捕まえた英雄としてヒーロー的存在となり、一躍有名となった。そんな雷慈をエレナは微笑ましく見守っていたのだった。

終わり

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